シンポジウム「再生可能エネルギーと地域づくりを考える」の報告

 3月24日に徳島県佐那河内村で行われたシンポジウムに参加してきました。2001年に行われた吉野川の河口堰反対運動や、ダム建設反対運動など住民運動が活発な徳島で、再生可能エネルギー自治体で、そして住民参加でやっていこう!という動きがあります。このシンポジウムの主催者は「佐那河内村」と「徳島再生可能エネルギー協議会」で、徳島の市民グループ「市民がつくるエネルギー」が共催しました。以下簡単に当日の様子を報告します。
 先ず、高知県梼原町の矢野町長が梼原町の概要を説明してくれました。めまぐるしいく変わっていく現代には根底にすえるビジョンが大切であり、それを町民のみんなで協力して作り上げた。それは、人と自然が共生し循環社会に生きる中で、人と人との「絆」を大切にする、というものです。町の面積の90%が森林で、林業の再生が課題。風力発電機2基(600kW×2)を設置し、その利益を間伐や再生可能エネルギーの導入に使う。など、先進的な取り組み、自治活動を報告していただきました。
 そして東京都職員の谷口信雄さんが地域における再生可能エネルギー可能性について講演してくれました。地域が潤う再生可能エネルギーとは?それにはどうしたらいいのか?ということをわかりやすく説明してくれました。自然エネルギーは東京などに本社がある大企業のものではなく、そのエネルギーが降り注ぐその地域の住民が優先的に活用できるものだ。つまり地域自治体もしくは住民が出資し、地銀が融資をし、(足りない資金は都市部から調達し)設備を建て、その利益が地方に落ちなければいけない。例として北海道の寿都町と秋田の風の大国を挙げていました。田舎の小さな自治体には資金力が無いかもしれないが、ファンドを作って、その年利の1%をその地域の農産物にすれば良いのでは?という非常に面白いアイデアも話されていました。そうすれば都市部の人は安心な農作物を手に入れられ、農村部ではその分の固定された売り手(収入)を確保できます。
 講演の最後にウィンドコネクトの斉藤純夫さんが、具体的な風力発電の事例を話してくれました。今年7月から始まる固定価格買取制度の意義とその経済的魅力を説明し、大企業ではなく地元が手がけるべきだと主張されていました。風力で失敗している例はたくさんあるが、それは補助金目当てにただ「立てること」に重点を置いたもので、故障せず、発電量を稼ぐことに全力を尽くしたところは成功している。そして立てる前の調査こそが大切で、そこで成否が決まってしまう。地方の事業を成功させるためには、地銀や信託銀行が、地域主導のプロジェクトに融資していかなければいけないとおっしゃっていました。
 講演の後この地域の町村長(佐那河内村町、上勝町神山町、(勝浦町長は急用で退席))と講演者の梼原町長、谷口さん(パナルデスカッションの進行役)、斉藤さんでパネルディスカッションが行われました。そのなかでこの地域の風力発電施設の計画と今後の可能性について話がされ、各町長は具体的な質問などをし、それに対して谷口さん、斉藤さんや梼原町長から回答がありました。
 以上約3時間のシンポジウムでしたが非常に内容の濃いものでした。日本の中でもここ行われようとしていることは最先端でとても興味深い計画だと思いました。これからはどんどんこのような自治体が現れてくると思いますが、自治体に限らず住民のグループや農家のグループ主導の再生可能エネルギーが普及していくことと思います。ドイツではまさに住民が再生可能エネルギーに自ら投資し、自分たちの設備から出る電力や熱を売って利益を上げ、収益を得ています。このように、地域の自然エネルギーはその地域経済を潤し、地域の持続可能な社会を構築していきます。(大企業の設備であればその収益はその大企業がある都市部へ流れ出てしまう。)
 今後はこの地域の各団体が住民を交えて自然エネルギーの可能性について話し合っていくようです。その動向を見守ると共に、心から応援していきたいと思います。
 補足:会場から意見として、「風車の建設ありきで話が進んでいるが、風力発電機を立てることによる環境破壊、自然破壊も考える必要があるのでは無いでしょうか?」ということがありました。このことは真剣に考えていかないといけないと思います。そして原発再生可能エネルギーに置き換えるというのではなく、先ずは『節電』をし必要でない電気は使わないという態度で生活するのがいいと思います。そしてどうしても必要な電気、熱は環境・自然になるべく負荷のかからないように作ったものでまかなっていくということが求められていくと思います。