シェーナウ電力会社(EWS)の最近

 シェーナウ電力会社(EWS)はこのブログでも何度か紹介していますが、ドイツの住民がつくってしまった電力会社です。今回はこのEWSの最近の活動についてご紹介します。EWSは最近、自治体のエネルギー公社と協力して、住民参加による電力の供給を始めようとしています。さらにEWSは住民による環境にやさしい発電施設(風力など)の建設をサポートしいこうと、自治体や、エネルギー公社と共同で発電施設の建設を手掛けようとしています。
 ヨーロッパの中ではドイツの電力会社事情が日本の事情と似ていたそうで、ドイツが日本のお手本になると言われています。しかし大きく違う点の一つは自治体ごとの認可契約というものにあります。電力市場の自由化前までは、それぞれの自治体が電力会社と契約して自治体内の電力供給を任せていたのです。この電力会社には大きく2通りあって、1つは地域独占の電力会社、もう1つは自治体が出資するエネルギー公社です。この認可契約は20年までと決まっていましたが、大抵の場合は20年契約でした。自治体と認可契約を結んだ電力会社は、その自治体の電力網を以前の電力会社から引き継ぎます(買い取る)。
 90年代から、自治体がそれまで認可契約を与えてきた地域独占電力会社から、自分たちの手に(自治体のエネルギー公社)電力網を取り戻そうとする動きが広がっています。2011年から2015年までの間にはドイツでは約1000もの自治体で認可契約が切れるそうです。ベルリンやハンブルクなどの大都市でも数年後に認可契約が切れるので、それに向けて、住民グループが、住民のための、環境に配慮したエネルギー供給を実現しようと電力網の買い取りを視野に入れて動いています。2014年に認可契約が切れるドイツの首都ベルリンでは、住民エネルギー協同組合・ベルリンが結成されてこの計画を進めようと企んでいます。2015年に認可契約が切れるハンブルクでは2013年9月に住民投票が決まっており、シュトゥットガルトではもっと具体的に話が進んでいます。2013年に認可契約が切れる同市では、2011年にシュトゥットガルト市エネルギー公社が設立されて電力網の買い戻しが計画されています。(ドイツで3番目に大きいミュンヘン市では以前からミュンヘン市エネルギー公社が電気を供給しています。)
 EWSはシュトゥットガルト市エネルギー公社のパートナーとしてエコ電力の供給を支援します 。ティティゼー・ノイシュタット市では2011年に認可契約が切れ、2012年5月4日から独自の電力供給を始めています。EWSは同市と協力して、ティティゼー・ノイシュタット電力供給会社(EVTN)設立を支援しました。重要な点は、エネルギー協同組合:Vita Bürger Energie(住民グループ)がEVTNに出資して会社の電力事業に関わっていることです。出資額は市60%、EWSが30%(始め40%。後に住民エネルギ協同組合に10%を提供)、住民エネルギー協同組合が10%。
 これまでEWSは独自の発電施設は所有していませんでしたが、これからは発電施設の設置も進めていこうとしています。もちろん住民参加でです。EWSの広告塔ミヒャエル・スラーデックさんはこう言います。「私たちは風力パークを買い取るなんて考えていません。ただ住民と一緒に風力パークの建設に参加しようとしているんです 。」チェルノブイリ原発事故後の住民活動をその原点に持つEWSは、このように住民の側に立った、住民にも利益を分配できるような形での発電施設の建設をしていこうとしているのです。
 シェーナウ市のあるバーデン・ブルテンベルク州、レーラッハ郡では、3自治体が共同で、風力発電パークの建設計画をしています。EWSはこの計画のパートナーとして3自治体から指名されました。もちろん、住民がその恩恵に預かれるような住民参加による風力発電パークを建てようとしています。住民は住民協同組合の一員としてこの事業に参加するという計画です。
 最後に以前のブログでも紹介した、ウルズラ・スラーデックさんが私に語ってくれたことばを引用します。「電力供給という事業は全ての人に関係することです。でもどうして私たちの社会のほんの一部の人だけがそこから利益を得ているのでしょうか?どうして全ての人が、もちろん少ないかもしれませんが、そこから恩恵を得られないのでしょうか?」

参照:
Wir sind der Daimler auf dem Markt für Ökostrom
バーデン新聞 (Elektrizitätswerke Schönau: Die Stromrebellen erfinden sich neu)