生物圏保護地域(Biosphaerenreservat)

 生物圏保護地域(Biosphaerenreservat)とはユネスコの「人間と生物圏計画(Man and the Biosphere :MAB)」に基づいて設けられている大きな範囲の自然保護区のことを言います。世界中に1976年から現在まで500を超す地域が指定されました。ドイツには15の生物圏保護区があり、日本には屋久島、志賀高原、白山、大台ヶ原の4個所が指定されています。この生物圏保護区はモデル地域でもあり、人間と自然が調和して共存していくために、持続可能な社会の構築を目指しています。この生物圏保護地域として指定されている保護区は歴史的に人間が自然と関わって作り上げてきた景観を多く含んでいて、特徴的なのは1つの生物圏保護区は3つの区域に分けられて管理されています。1つは立ち入りが禁止されている「中心地区(core area)」、もう一つが、歴史的農法などの環境に優しい活動によって動植物の保護と歴史的な景観の保護を目指す「緩衝地区 (buffer area)」、そして人間の活動が中心に置かれ、持続可能な社会が促進される「移行地区(transition area)」です。僕はこの保護区を3つに分けるというやり方がとても理にかなっていると思います。希少になってしまった動植物を保護するのには、まとまったある程度の大きな土地が必要で、人間の立ち入りが制限されることが多く要求されます。この「中心地区」はそのような希少な動植物とその生息域の保護が可能であり、”手付かずの”自然を後世に残すことが出来ます。緩衝地域では長い歴史の中で培われてきたその土地の文化を引き続き伝え、活用していく事で、その歴史的な景観(土地の利用の仕方が形作ったもの)の中で生活する動植物を保護していけます。移行地区は住宅地や工場などを含み、環境に負担をかけない持続可能な社会を構築していくための新たな試みがなされます。このように保護地域はただ単に人間の活動が禁止された、自然がたくさんある場所ではなく、人間と自然が上手くやっていくための、様々な目的が同時に達成されうる地域とされている所がいいとおもいます。生物圏保護地域のコンセプトは、自分が住んでいる普通の町にもその周りの自然を包括的に考え、1つの地域として自然と人間の共生を実現していくのにとてもいい指針を私達に示してくれると思います。