足るを知る

 どんな社会に暮らしたいと私たちは願っているのでしょうか?もちろん色々な視点がありますが、今回は『足るを知る』という心の面から見ていきたいと思います。環境破壊、貧困、戦争や原発事故など、私たちは様々な問題を抱えています。このまま今までしてきたように続けていけばさらに問題は大きくなり、私たちが依存している生態系は破壊され、多くの種が姿を消し、裕福な人たちと貧しい人たちとの差はもっと広がっていきます。そしてこのツケを私たちの子供たちが負うことになります。このような未来を私たちは望んでいるのでしょうか・・・?自分たちが「豊かな」社会で暮らし、自分たちが育ってきた地域社会と地域の自然、文化を未来に残して、私たちの子供も幸せに暮らしていくことを望んでいると思います。さらに同じ地球に住んでいる人たちがなるべく幸せに生きることも願われているのではないでしょうか。これらのことは今現在の私たちの幸せな生活にも深く関わってくるものだと私は思っています。
 さて上に挙げたような社会は「持続可能な社会」と言えます。ただ単にずっと循環して続いていくことが求められているだけではありません。生きる喜びや希望もこの持続可能な社会には必要です。科学技術が発展して、効率がよくなったり、新しいものを発明したりして資源が持続可能に利用できるようになったとしても、私たちと私たちの子孫が幸せに暮らせるとは限りません。持続可能な社会には資源が循環してずっと利用されることは基本的な条件です。しかし資源が循環して地域の生態系が何とか維持されたからといって、貧富の差が無くならなかったり、地域の美しい景色が壊されてしまったり、犯罪が減らないのであればどうでしょうか・・・?だから豊かな心をはぐくむ姿勢がどうしても必要になってくるのです。そのために『足るを知る』という心の持ち方がとても大切だと思います。たくさんあるのに、もっともっとと求めていては、いつまでたっても心が満たされることはありません。たとえ少なかったり、質が悪かったりしても、あることに感謝し満足する心こそが、奪い取ることをやめ心豊かに暮らす重要なカギです。『足るを知る』とは我慢することではなく、私たちが現在目指している持続可能な社会で、幸せに生きていくための心のあり方です。このような心を育てるためには感謝する心が大きな助けになります。例えば、安い賃金で大量生産された使い捨ての物を買うのではなく、丹精込めて作られた物を感謝して使い、出来る限り大切に扱うことがいいと思います。そして自然の恵みを感じられるように自然を身近に体験することも大切でしょう。
 今、私たちの身の周りには物がたくさん溢れかえっているので、あるものを我慢したり、使わないということは、無い場合にそうするよりももちろん大変です。しかしこれが私たちの今の重要な課題だと思います。また、物やお金を多く持っている人はそれを管理しなくてはいけません。盗まれたり奪われたりすることに心を悩ますことは心を不健全にするでしょう。本当に必要なものを最小限持つことが人の心を楽にしてくれるものだと私は思います。
 私たちが目指す「持続可能な社会」は『足るを知る』というような心の持ち方を一緒に組み込んでこそ始めて私たちにとって意味のあるものになります。だから満足する心や感謝する心を大切にしていきましょう。こうして私たちは、私たちが本当に望む暮らしに一歩近づけると思います。