原発延長

 きょうも新聞記事からの報告をします。10月29日(2010)のBadische Zeitungの一面にドイツの原子力発電所延期運転に関する記事がありました。28日に行われたドイツ連邦議会(下院)で原発の延長稼働が盛り込まれたエネルギー法案が賛成308、反対289、棄権2のわずかな差で可決されました。メルケル政権は連立与党の過半数割れをしている連邦参議院(上院)での審議をしないでこの法案を実施しようとしています。それに対し野党、州政府、市営企業は違憲として憲法裁判所に訴える方向です。この法案によって平均12年の原発の稼働が延長され、それによってさらに4400トンもの放射能廃棄物が作り出されることになります。しかしこの核廃棄物の最終貯蔵施設が確保されているわけではありません。公営の電力会社はこの法案に反対するキャンペーンを始めました。4つの大原発会社にとって有利なこの法案は、地方の小中電力会社には損失をもたらします。原発会社からの安い電力は市場におい競争力が強いからです。
 この原発の延長に対し、たくさんの市民はデモに参加し積極的に反対運動をしています。ある統計ではドイツ市民の大半

2009年10月に出された統計(出典;ZDF Politbarometer(公共放送局の番組))ではドイツ市民の大多数(52%)が原発の運転期間延長に反対しています。)
2010年9月の統計(出典;同上)では61%の人が原発の延長に反対しています。


原発に反対しています。こんな中でのこの延長の決定は市民の願いに反しているだけでなく、自然に対する負荷を増大させ、さらに私たち市民の健康、生死に関わる危険性を、将来の世代に対する大きな負の遺産として、半永久的に残すことになります。そういう意味で経済大国であるドイツが先頭を切って脱原発政策を推進してきたわけですが、それが今回原発の延長という形で後退してしまったのは、他の国々の原発政策にとっても悪い影響を与えるのではないかという不安があります。
 原発について最近思うことは、この新聞記事にもあったように、終処分場の問題と、その費用についてです。原子力発電所が解体された後も長年にわたって完璧に安全に保管しないといけないわけですが、その費用は電力に反映されているのか?そしてどこにその貯蔵場所を確保するのか?という疑問です。誰も放射性廃棄物の保管場所近くに暮らしたいとは思わないでしょう。地震の多い日本ではなおさらそうでしょう。市民はこういうことに対し鋭く政府や原発企業に問い詰める必要があると思います。ただ単に原発に関わる権益のために原発を稼働させるということはあってはならないことだと思います。
 (参照:MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/world/europe/101028/erp1010282346005-n1.htm