原発政策

 今回の福島原発の事故を受け、3月15日の時点でドイツ政府は7つの古い原発を一時停止させることを決定しました。そしてドイツ国内のすべての原発について安全性の確認をすることを決めています。この対応は非常に早かったと驚いていますが、直後に迫る選挙(3月27日)のためのパフォーマンスであるとも見られています。7基のうち2基は廃炉になる見込みがあります。EUでもEU内の143基の原発の安全確認をし、不備があるものについては廃炉にすることも考えています。
 さて今回の事故を受けた日本の原子力政策はどうかというと、非常に心もとない印象を受けます。もちろん、先ずは福島原発が安定するように全力を向けなければいけないというのはもっともですが、政府からこれから先の原発政策について、まだほとんど言及がありません。枝野官房長官原子力政策を見直すという意見に同調していましたが、ドイツのような一時停止などの具体的なものはまだのようです。さらに日経新聞によると、与謝野馨経済財政担当相は「将来も原子力は日本の社会や経済を支える最も重要なエネルギー源であることは間違いない」と述べており、原発の重要性を強調しています。また北海道新聞によると、日本経団連米倉弘昌会長は「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と述べています。これらの日本のリーダー達の言葉は、国民と国土の安全性を真剣に考えていない暴言です。この騒ぎが落ち着けばまた以前のように原発に依存する日本社会の方向に向かっているのでしょうか?
 電力会社、原発関連会社などは自分たちの生活がかかっていますから今までどうり仕事をして収入を得たいだろうと思います。莫大な金額がかかわってくるので、それに引き付けられる人達がいるでしょう。原発関連企業、この企業をスポンサーにもつテレビ各局などです。原発批判を徹底的にするテレビ局が無いのもそのせいだと聞きいています。またその一方で原発関係で働いている社員の人たちもいます。今必死で福島原発の復旧に当たっている東電の下請け会社の社員達、東電社員もそうです。私の知り合いに原発関連の仕事をしている人がいますが、その人たちの生活、家族を守っていくためには、と考えると彼らの立場は思いやられます。しかしそれ以前に考えるべきことはたくさんあるはずなのです。命の危険を冒して働く価値があるのかどうか、家族の安全は守れるのかどうか、地域社会にたいしての責任、そして自分と家族の幸せはそこから本当に手にすることができるのかどうか。このようなことはもっとも基本的なものとして働く前に考えて置く必要があると思います。
 信じられないことに、悲惨な原発事故を経験したチェルノブイリのあるウクライナスリーマイル島のあるハリスバーグ市では原発が現在でも運転しています。電力会社や国が安全だというからあんなに恐ろしい体験をしたのに、続けて自分の周りに原発が運転することを認めたのでしょうか?以前から原発の安全性は国や電力会社は強く保証していました。しかしどんなに保障してくれても何かの原因で事故は起こりうるものなのです。ウクライナハリスバーグのように福島でも事故後は以前どおり原発が動き出すのでしょうか?
 原発の危険性というものは今回の事故、チェルノブイリ、スリーマイルで明らかになりました。原発はとても巨大なエネルギーと毒を持っているので、いったん事故が起こるととんでもない被害を引き起こします。実際被ばくしてしまった方も少なくないのではないでしょうか?この地域の農家は今後どうしたらいいのでしょうか?ほぼ30キロ圏内の人々の生活が奪われ、不安の中で不自由な避難所での生活を余儀なくされています。働くこともできず、今後も我が家に帰れないかもしれないと思っている人たちはどれだけ辛いのでしょうか?長年住み慣れたふるさとに帰れなくなるかもしれません。福島原発周辺の人達のことを私たちはニュースで見てはっきりと原発の『危険性』と原発に付きまとう『不安』を認識したと思います。このような「事故」の危険性だけでも原発を廃止するのに十分ですが、さらに色々な問題が原発には山積みになっています。住民の安全を守る市町村、県、国がこのような危険なものを国民の周りに(大都市は除く)50基以上も置いているということは暴挙に近いのではないでしょうか?利益がいくら大きいからといって、市民の平穏な生活を冒してまで原発からのお金が必要でしょうか?公務員、政治家はこのことに誠実に取り組まなければいけません。そして私たち市民と企業も原発がいらないということをはっきりとした意思表示と節電などの態度でもって示していくべきだと思います。

 今回は原発に代わる再生可能エネルギーなどについては触れませんでした。もちろん原発を無くした分何らかの形でそのいくらかを補う必要性が出てきます。しかしこの急場では「何かで補えるから」原発を無くすのではなく、「国民(市民)生活に危険なので」廃止し、必要であれば国民の安全と幸せな生活のために新しいエネルギー源を活用していく、というような態度で臨みたいと思って書きました。もちろん国、県、市町村はそれぞれの立場で、安全性、CO2の排出量、地域での自家発電、環境負荷や景観などを考慮してしっかりとしたエネルギー構想を建てていくべきだと思っています。