市民による電力供給会社(ドイツの市民活動)

 今回は黒い森にあるシェーナウ(人口約2500人)という町の電気に関する市民活動について紹介します。シェーナウ(schoenau im Schwarzwald)のUrsula Sladekさんが4月11日に世界のもっとも重要な環境賞の一つで、グリーンノーベル賞と言われているゴールドマン環境賞を受賞したニュースをお知らせしましょう。Sladekさんはシェーナウに市民による電力供給会社を設立した中心人物です。この受賞の理由としてシェーナウのモデルは地域分散型の電力供給のお手本となり、Sladekさんはこの電力会社(EWS:Elektrizitaetswerke Schoenau)のリーダーとして他の経営者と共に電力供給の市民活動に対して大きな貢献を果たしたとしています。
 きっかけは先日25周年を迎えた1986年のチェルノブイリ原発事故でした。放射性物質を含んだ雲は黒い森にも到達し、シェーナウでも不安が募りました。子供を持つ親達は特に自分たちの子供の心配をし、「原発のない未来のための親の会」を設立しました。5人の母親であるSladekさんは「私のこの活動の動機は子供の将来のためでした」と語っています。
 90年代の前半にシェーナウではKWR電力会社との電力供給の契約の更新が迫っていました。シェーナウに電力を供給していたKWRの電気料金の設定は基本料金が高いせいで、使えば使うほど電力価格は割安になり、節電すればするほど割高になるというものでした。これに対し親の会は使用料に応じて電気料金を計算する比例料金体系を要求し、脱原発のための再生可能エネルギーコジェネレーションの導入、コージェネレーション発電の買い取り価格の引き上げを求めました。しかし電力会社はシェーナウの市民が進めていた再生可能エネルギーコージェネの促進活動を妨害し、さらに市が早期に20年の更新契約をするならさらに10万マルクを市に支払うことを申し出てきました。そこでこの市民グループは市が契約を更新しなければ、この申し出と同額(年間25000マルク)を市に支払うと提案しました。この市民の申し出にもかかわらず市はKWRとの契約更新を決定しました。この市議会の決定の是非を問うために1991年の10月に投票が行われ56%の支持票を得て市民グループが勝ちました。
 電力を自分たちで供給するために、1994年ショーナウの市民グループは電力供給会社EWSを設立しました。1995年の11月20日に市議会はEWSに市の電力供給を認可しました。しかし今度はKWRによって再び市議会の決定を問う市民投票が開催され、約85%に達する投票率の中で52,4%の支持を得てEWSが勝ちました。しかしまた送電網の買い取りという問題が出てきました。650万マルクの価値しかない送電網に前シェーナウ市の電力供給会社KWRは870万マルクという高値を要求してきたのです。EWSは650万マルクでも高いと考えていましたがこの要求(870万マルク)に対し送電網を買い取ってから訴えることにしました。400万マルクというのがEWS側の見積もりでしたが、この金額は有志の市民の経営参加とGLS銀行の“シェーナウエネルギー基金”を通しすぐに集まりました。そしてこの法外の金額を集めるためにドイツ全国で大々的な募金活動を始めたのです。様々な環境保護団体(BUND、NABU、Greenpeceなど)も募金を呼びかけ、この募金活動で集まったお金は200万マルクに達し、余分に必要な金額を手にすることが出来たのです。このキャンペーンは無料で新聞に公告を出したり、広告代理店の協力で「(原発産業にとって)俺は厄介者さ」というキャッチフレーズによって大成功に至ったのです。結局570万マルクをKWRに支払い送電網を買い取りましたが、その後350万マルクが適正価格であると裁判所は判断を下しています。
 EU電力自由化指令に従って1998年にドイツは電力市場の完全自由化を実現しました。これによってドイツでは顧客は自分で電力供給会社を選べるようになったのです。この自由化以来、原発以外からの電気、環境にやさしい電気を求める人たちが増えていきました。EWSもドイツ全国で環境にやさし電気の供給をうたい、以前からの多くの賛同者がすぐさまシェーナウの“電力の反逆者”と呼ばれるEWSの顧客になったのです。そうして始めは1700世帯の顧客数だったのが2006年には3万7千世帯に、そして現在(2010年12月)では10万世帯を超える顧客といくつかの大きな企業を顧客として抱えています。以前紹介したGLS銀行、チョコレート会社のリッター、Bio食品店のAlnaturaやビオ豆腐製造会社Life Food社などがあります。
 現在(2009年)EWSの供給する電力は再生可能エネルギーが95,9%(水力発電の78,4%が6年より新しい。)と天然ガスが4,1%(環境にやさしい効率のよいBHKW(コジェネレーションシステム)を使用)となっています。
EWSには新しい環境にやさしい発電器を増やしていくために、Sonnencent(ソーラーセント)という制度があります。1Kwh当たり少しずつ顧客から助成のためのお金を徴収します。顧客は0,5セント、1セント、2セントから選び環境にやさしい電気の製造に貢献できるのです(EWSの料金システムは基本料金が月6,9ユーロで23セント/kWh)。今までに(2010年12月まで)1750基の環境にやさしい発電施設がソーラーセントの助成プログラムによって誕生したのです。特徴的なのはこの発電施設はEWSの所有ではなく顧客の所有物なのです。
 このような市民による反原発から起こった環境にやさしいつまり人間にやさしい電力を供給する会社の設立という試みは実際に自分の村の原発依存を無くし脱原発につながる道筋を示してくれています。このシェーナウの市民の積極的な活動は、現在原発問題で頭を悩ましている私たち日本人に勇気を与えてくれるものだと思います。ドイツと日本は状況が違うにせよ、私たちは自分たちの手で自分たちの望む社会を造っていけるのだと思います。このシェーナウの事例から脱原発、環境にやさしい社会、幸せな生活のための何かしらのヒントがあるように思います。

Ursula Sladekさん Quelle:http://goldmanprize.org/slideshow/user/321/1387


参照
EWSホームページ(ドイツ語)
資料:市民が主役の再生可能エネルギー普及(遠州 尋美)

12万人の反原発デモ

 先日の日曜日(4月24日)はキリスト教圏ではイエスキリストが蘇った復活祭の日でした。そして昨日の月曜(4月25日)もオースターモンターグといって祝日でしたが、この祝日にドイツ全国で一斉に反原発のデモがありました。私も日本人の友人3人とライン川沿いにあるブライザッハ(Breisach)という町のデモに参加してきました。


この日はドイツ、フランス、スイスの3国の国境付近で同時に原発の近くの橋をデモ隊で30分占拠するというアクションがあったのです。私たちが行った橋だけでも5000人が参加し、3国のライン川にまたがる11の橋の合計人数は2万人(警察の情報では1万人)にものぼりました。昨日一日だけでドイツ全国ではなんと約12万人(BUND発表)が反原発デモに参加しました。フライブルクの大聖堂ではチェルノブイリと福島での原発事故の被害者のために祈るミサがありました。25年前の今日4月26日にチェルノブイリ原発事故があったのに合わせて行われたものです。多くの人が福島、チェルノブイリのために祈ってくれ、原発ではなく神様が与えてくれた自然のエネルギーを使っていこう、私たちはチェルノブイリであの時にもっと学ばなければいけなかったというようなことを教会の中で言っていました。
 さて先日(4月24日)東京でも反原発のデモが2つあったのですがその参加者は5000人と4500人でした。統一地方選挙では反原発を主張した候補者が当選した所が多くあった一方、原発が多くある福井県敦賀市新潟県柏崎市では依然原発容認派が市長、議員に当選したようです。既に原発がある地元の人たちの原発依存(職場や利権)というものがはっきりしたのではないでしょうか?職や給料を失うことが怖いのはわかりますが、本当に子供のこと家族のことを考えて生活するもしくは仕事をしないといけないと思います。働くため、給料をもらうために原発が必要なのではなくて、家族と幸せに暮らすために働くことの方がはるかに大切です。福島原発のような事故が起こって、原発の危険性をしっかりと認識できた今、原発関係の仕事すること、原発を容認することは将来の事故に対する明確な責任と加害に自分から加わっているということだと思います。厳しいかもしれませんが、原発を容認してきた福島県原発のある市町村の今回の事故に対する責任というものもあると思います。もちろんその前に先ず始めに東電の責任は一番大きく、原発を推進してきた政治家、公務員、メディア、大学教授の責任も大きいはずです。そして原発が存在していることを容認してきた私たち大人もこのような責任を負っているはずで、未来の子供たちに対してもこれから負っていかなければならないでしょう。
 今回の東京でのデモ、先日の高円寺での1万人以上のデモはこうした過去の責任と未来に対する義務と希望の表れではないでしょうか?私たちはもっと声を上げていなければいけないでしょう。ドイツのように全国で同時にデモを企画するのもいいでしょうし、反原発の署名活動に参加することも出来ます。政治家に働きかけることも出来ますし、首相官邸や省庁にメールで自分の意見を伝えることも出来ます。反原発の意見を出さないメディアは信用せず、見ない買わない、苦情を言うことが正常なメディアを造っていくことの助けになります。原発だけに多くの国の補助金が使われていることに対して大きな声で文句を言わなければいけないし、電力会社と政治家、メディアの不正常な関係を追求していくことが何より大切です。このような自分だけの利益で動いて、一般人に不利益を与えている企業、政治家、マスコミは弾劾されないといけないはずです。現状の組織、システムのままではいくら省エネをしたところで一部の人だけに利益をもたらす原発は無くならないのではないかと不安に思っています。
 今こそ私たちは自分たちの幸せのために、わが子の未来のために、そして私たちの子孫のために大きな声を上げ、行動していかないといけないと思います。上に挙げた以外にも私たち個人が出来ることはあります。原発からの電気を使いたくないという人は、(再生可能エネルギー全量買い取り制度が2012年から始まる見通しがあるので、)太陽光パネルを自分の家に設置してもいいでしょうし、自分の住んでいる市町村で使える再生可能エネルギーの発電器などを設置していくように市町村長、役所に訴えてもいいでしょう。町内会でもそういう設備を建ててもいいかもしれません。
 今回のドイツとフランスの国境でのデモでは家族連れの参加者やお年寄りの参加者を多く見かけました。自然体でデモに参加し、出店で反原発グッズやケーキ、ビールを買いそこら辺にある芝生でお昼ごはんを食べ反原発を叫んで楽しく帰っていきます。日本でもこのようにデモをもう少し気軽に参加できる、そして楽しいものにしていくことが多くの人達を巻き込んで脱原発の大きなうねりを創っていく助けになると思いました。

署名などのサイト
福島原発
http://fukushimahairo.web.fc2.com/
浜岡原発
http://www.geocities.jp/genpatusinsai/
http://www.stop-hamaoka.com/
柏崎刈羽原発
https://www.sitesakamoto.com/unplug_kariwa/index.php
六ヶ所村再処理工場:
http://cnic.jp/rokkasho/img/0201hagaki_ura.pdf
http://cnic.jp/rokkasho/img/0201hagaki_omote.pdf
http://cnic.jp/modules/rokkasho/

原発無くても電気は大丈夫YouTube(専門家より、原発について):
http://www.youtube.com/watch?v=PLJVLul6Wz0
http://www.youtube.com/watch?v=ovv2__vc-Nk

原発市民の動き
デモ情報こちら<<

原発についての話

 今日で地震発生から早1か月が経ちましたが、被災地ではまだまだ大変な状況が続いています。一刻も早い、そして希望が持てる復興を心から祈っています。このような地震津波の甚大な被害にも関わらず、原発への対応を迫られている政府は、この原発事故のおかげで震災への対策がおろそかにならざるを得なくなっているのは腹が立ちます。あれだけ安全だと豪語していたものがもろくも大きな事故を引き起こし、震災で助けを待っている人がいるのに、政府首脳、自衛隊、レスキュー隊や警察などの優秀な人材が原発に対応しないといけないのは本当に愚かなことだと思います。地震などの非常事態に起こる原発事故ほど厄介なものはないでしょう。このようなリスクの高いものはやはり無くしていくべきでしょう。
 さて先日Oeko-FreiWilligが主催でフライブルク近郊に在住している環境ジャーナリストの村上さんに原発について講演をしてもらいました。テーマはドイツのエネルギー政策で、脱原発から再生可能エネルギーへの展望を話して頂きました。ドイツが再生可能エネルギーに力を入れ、日本の数倍もこの分野に投資をしていることや、再生可能エネルギーが増えるような法律、政策が考えられていることなどを伺いました。このようなビジョン、政策は日本でも参考に出来るものだと思います。脱原発をするために私たち市民が出来ることはという質問に対して、村上さんは「選挙で脱原発を主張している人を選ぶこと」とおっしゃっていました。また前回村上さんにお話を伺った折にも、市民が直接政治家に対して意見を伝えていくことが大切だとおっしゃっていたのはまさにその通りだと思います。
 村上さんに引き続き、第2弾として環境ジャーナリストの池田さんにも講演をしてもらいます。4月20日(水)の16:30〜19:00、フライブルク市内のTreffpunkt Freiburgという場所で行います。テーマは再生可能エネルギーと地域経済についてです。質疑応答の時間も多く取る予定です。原発について、エネルギーについて聞きたい、話したいという方は是非参加してください。
 前回書いたブログの中で日本のリーダー達は本当に日本国民のことを考えているのか?ということを書きましたが、ソフトバンク孫社長はとても平衡感覚のある視点で発言をしていました。こちらから是非ご覧ください。「人命を含めたすべてを考慮した原発のコストを経営者は考えていかなければいけない」や「損得ではなくて本当のことを言う人が必要だ」というような発言は非常にもっともな事だと思います。このようなまともなことを日本の大きなテレビ局の番組では言えないということは非常に大きな問題だと思います。電力会社をスポンサーに持っているので、マスメディアは電力会社からの圧力に屈して反原発の意見が出せないのです。このような権力、お金の力に簡単に左右され、国民のことを真剣に考えないようなマスコミは信頼できないと思います。反原発のデモのニュースもほとんど放送されないそうです。こちらからこちらMSNからも)4月10日のデモのニュースが報告されています。もちろん正しい事を伝えるという報道者としての本文を果たそうとして頑張っているジャーナリストの方も多くおられるようです。 
 今回はちょっと色々な方面の話を一度に書いてしまいましたが、特に言いたかったことは、原発問題も大きく騒がれているけど、震災で打ちひしがれている現地の人達のことが原発で二の次になってしまうことはとても酷いことだということです。

募金

 昨日フライブルクのVolkshochschule(市民大学)と言うところで、日本の震災のための募金活動がありました。音楽ありケーキあり、折り紙や習字を体験できるスタンドありと様々な催し物がありましたが、非常にたくさんの方が来て募金をしていってくれました。ドイツ人の方々は非常に快く募金をしていく姿にありがたさと同時に尊敬の念も起こります。このようなドイツ人の寄付に対する態度は、今回の日本の震災に対してだけのものではなく、普段の生活でもたまに見かけます。
今回の震災に対する募金活動はここフライブルクだけでもとても多岐にわたっています。学生の募金活動、音楽家と音大生のチャリティーコンサート、市民大学の募金、フライブルクの近くバーゼルで行われた私の友人が主催したチャリティーコンサート、そして私が今かかわっている[http://www.gls.de/:title=GLS Bank]の募金口座、その他にも色々あるはずです。
 さてこのGLS Bankですが、この銀行は環境(エネルギー、有機農業)系、教育系、社会系や障害者などの小中の施設、企業に少ない利子で投資している銀行です。この銀行に以前から『[http://www.entwicklungshilfe3.de/aktuelles/article/nr/450/:title=未来基金・発展援助]』という基金の口座があり、ドイツ国外での飢饉や災害時にその国にある団体でこの銀行と以前から付き合いのある所で、基準を満たす団体に募金を寄付しています。今回日本の震災に対して、緊急にこの口座に日本のための募金を集めるようにしてくれました(振込時にJapanと記入すると日本のための募金になります)。この募金の寄付先として『再生可能エネルギー』の分野で復興活動をされる非営利の団体(例えばNGONPO、小学校や町内会など)を探している所です。この団体は出来れば以前からこの分野(再生可能エネルギー)で活動している所が望ましいということです。またもし他の分野で、特に強い要望があればそちらにも寄付は可能だということです。
地震が発生して既に1ヶ月が経とうとしていますが、道路の復旧が整い始め、物資が行き渡っているということを被災地から聞きました。もちろんまだ輸送道路がしっかりと復旧していないところはその立て直しを緊急にしてもらいたいと思います。その他の少し落ち着いてきている地域では、心のケアをはじめとしてより人間らしい生活ができるように周りの人たちと支え合っていってほしいです。プライバシーの問題、避難所での大勢の人たちと生活するストレスなどの緩和も今後どんどん重要になってくるということです。まだまだとても苦しい状況の被災地なので、復興時の都市計画や再生可能エネルギーのことなどについては考えられる状態でないかもしれません。しかし、今後のより幸せな生活、子供たちの世代の生活のことを考えより素敵な街を復興していってもらいたいと思います。そのお手伝いをこのGLS Bankの基金は少しでもできることと思っています。
 私自身このGLS Bankに口座を持っていて、震災発生後に個人的にこの銀行に募金のための口座を作ってくれないかとお願いしたところ、上に書いた基金があるということでその枠組みの中で募金できるということを言ってくれました。この募金先の団体探しを今手伝っている所です。もし現地で復興支援を再生可能エネルギーの分野でしている、もしくはしていこうとしている団体を知っている方がいらっしゃれば連絡ください。

(以下GLS Bankからの募金のお願いの文章を日本語に訳したものです)


日本 親愛なる読者の方へ!
日本への募金が私たちの銀行で始まりました。
私たちから募金を呼びかけていなかったのにもかかわらず、そしてこの基金が日本では無いにもかかわらず、私たちに募金をゆだねてくださる方がいました。
これは私たちの仕事と潔白さに対する大きな信頼を示すものだと思います。
今までこの基金は、信頼できるそして長年にわたる活動をしているプロジェクトパートナーのある国の困窮・災害地域でのみ活動してきました。
経験的に我々は、メディアの興味が薄れていくと災害地域の問題はもっと厳しくなることを知っています。復興のためのお金と物資が不足していくのです。復興の過程は時間がかかり、パートナーを必要とし、とてもゆっくりと行われていきます。
最近災害に見舞われた国々と日本とでは大きな違いがあります。先ず、復興のために優れた教育を受けた多くの人たちはお金を捻出でき、そして経済的に恵まれた国であるということです。
しかし、同情と連帯の感情を、募金という行為の中で表そうとしている人たちが多く存在します。
私たちが集めた日本のために募金は、全額復興のために寄付する考えです。このための基準は他のパートナーと同様のものです。この募金は特に再生可能エネルギーの再興に関するプロジェクトの支援に使用していくつもりです。
地震津波は凄まじいもので、非常に多くの被災者が生活基盤を失い、愛する人たちの死を嘆き悲しんでいます。このような状態ではありますが、自然災害の後には再興への光がさしています。
福島原発周辺の放射線物質によって強く汚染された部分では復興の光は見えないでしょう。
3つの危機に直面した日本人は、私たちの意識や同情、そして実際の行動を変化させる新たな道を模索することがどんなに切迫したものかを教えてくれています。
Zukunftsstiftung Entwicklungshilfe
Kto. Nr. 12 330 010 (Verwendungszweck にJapanと記入してください)
BLZ: 430 609 67 GLS Bank 
GLS Bank http://www.gls.de/
GLS Bank Zukunftsstiftung Entwicklungshilfe http://www.entwicklungshilfe3.de/aktuelles/article/nr/450/

原発と子供の癌発症率

 今回は2007の12月に報告されたドイツの幼児白血病原発の関連について書こうと思います。「原発の近くに住んでいる5歳未満の子供の癌の発症率が他と比べて高い」という研究結果が報告されました。この報告書はKikk-Studie(Epidemiologische Studie zu Krebs für Kinder in der Umgebung von Kernkraftwerken:原発付近における子供の癌発症に関する疫学的研究)と呼ばれ、ドイツ環境・自然・放射線保護省の下にある連邦放射線防護庁がドイツ小児がん登録機関というところに委託して行われたものです。
 この調査は2003年から2007年までの間で行われ、1980年1月1日から2003年12月31日までの期間内の16原発立地地点(22基の原子力発電所を含む)の周辺が対象となっています。この調査の実施と結果は何重にも検査されていて、この結果の正確性と総合的な質が信頼出来るものであることを裏づけています。「原発から居住地の距離と5歳未満の幼児の癌発症の危険性との関連が観測された。白血病の発症の危険性は、原発からの距離が5km以内の範囲で、その他の地域と比べ2倍以上(2.19)であった。10km以内の範囲では1.33倍である。」というのがこの研究の成果です。
 この結果は非常に恐ろしいものだと思います。特に小さなお子さんをお持ちの夫婦、家族にはとても不安なものでしょう。”放射線”と癌の関係まではしっかりとした証拠が無かったものの(通常時の計測されている放射線量が原発付近でも人体に影響が出ると言われる値より低いから、直接”放射線”と病気が関連したものであるということが確認出来ていません。)、原発と子供の病気との関係はしっかりとした形で表されたものであると思います。今回の東京電力福島原発事故のような原発自体の危険性を始め、このような通常の運転している時の危険性についても今後市民の一人一人が考えていく必要があるはずです。このような危険性がある原発を本当に私たち市民の一人一人が必要としているのかを考え、国や地方自治体に対し、自ら主張していくことが今求められています。


参照:http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=619

Kikk-Studie(ドイツ語)

カエル救出大作戦

 僕の家の近くでは春になると森を走る車道に低い柵が登場します。カエルが車に引かれないようにするためです。3月から4月にかけてヒキガエル(Erdkroete; ヨーロッパヒキガエル)とアカガエル(Grasfrosche; ヨーロッパアカガエル)が産卵をしに水場に向かって移動してくるのですが、そこに車道が走っているので、運が悪いカエルたちは車のタイヤでぺちゃんこになってしまいます。この時期カエルが道路で大量に轢かれている惨状を目にします。柵が完全ではないのと、柵が無いところから道路を横断しようとしたカエルさんたちが無残にも殺されているのです。
 ここフライブルクでは市民がカエルさんたちを助けようと柵をめぐらし、そしてカエルが動き出す夜にカエルたちの移動を手伝っています。柵のために道路を横断できないで困っているカエルを捕まえ、池がある方へ放してあげるわけです。そして4月に入ると産卵を終えたカエルたちは元いた場所に帰っていくので、今度は池側から反対方向、来た方向へ帰してあげます。
先日参加した時は子供が2人来ていて、カエルを見て、捕まえて大はしゃぎしていました。途中でイモリも見つけました。子供たちが小さな体全体でカエルやイモリと向き合っている姿はとても微笑ましいものでした。このような実体験を通し子供たちは動物とは何か、自然とは何かを体の中に残していけるのはとても素敵な事です。このような体験をさせてあげることや、このような環境を子供たちの周りに作ってあげることが大切です。それが環境教育の基本となるのだと思います。

池のヒキガエルの夫婦とタマゴ


一匹の雌に5匹のオスが

 このヒキガエルはオスが圧倒的にメスより多いのでメスをめぐってオスたちが必死で戦っています。メスの方がオスより大きく、産卵時はオスがメスの上に乗っていて、メスはオスを乗せたまま力強く動き回っています。人間界はオスメス同じくらいの数なので良かったです。この写真撮影の後、見るに見かねて一番しっかりしがみついているオスを残し、他のオスたちには離れてもらいました。このオスたちには可愛そうなことをしましたが、こんな状態ではこのメスは弱ってしまいますからね。

原発を無くす

 前回は原発を無くすことが先決問題だということを書きました。私たちが安心して家族や友人、近所の人たちと住み慣れた場所で幸せに暮らしていくためには、大事故の危険がある原発はどうしても止める必要があります。
しかし原子力エネルギーが無かったら日本のエネルギーの需要に応えられないというような主張をする人たちがいます。本当にそうでしょうか?今現在の計画停電が行われている関東地域を見るとなるほどと思うかもしれません。しかし逆に見れば、福島の原発がなくても何とかやっていけるということは分かりました。関東の工場など産業部門にとってはとても厳しい状況ですがどうにかなっています。ということは今の状態でなるべく電気を使う量を減らしたり電気以外のエネルギー源(ガス、薪炭など)に変えたり、原発以外の発電施設からの電気を供給するようにすれば現状より良くなるということです。
 さて、私が今住んでいるフライブルクは環境首都と言われていますが、このフライブルクでも1960年代には約60%も原発からの電力に頼っていました。それが原発からの脱却を目指し2003年には約30%、そして2008年以来フライブルクにある一番大きな電力会社badenovaから供給される個人顧客への電気は原発以外から、と成果を出しています(フライブルク市全体でみるとまだ20%を原発からまかなっています)。Badenovaの原発に変わるエネルギー源は再生可能エネルギーコジェネレーションシステムと環境に優しいものを使い、この電気は2009年以来ドイツの一番高い基準の認定ok-power-labelが与えられています。フライブルクでは、"エネルギーの節約"と"効率的なエネルギーの生産"、"再生可能なエネルギーへの移行"を目標に掲げてこのような成果を出しているのです。日本もこれに見習う必要があり、原発が無くてもやっていけるということを理解しないといけません。もちろん日本には日本の置かれた環境、条件があるのでそれにあった方法でエネルギー政策を考える必要はありますが、フライブルク市のようにしっかりとした目標を掲げてやっていくべきでしょう。震災などの時のリスクを少なくするためにも各県、市町村でエネルギーの自給を目指さないといけないと思います。フライブルクのような例があることは今の日本にとても大きな希望を与えると思います。日本の原発依存度は30%弱なので、フライブルク市原発からの電気を40%削減したという事実は上に書いた主張(原発がなければ日本はやっていけない)が当たっていないことを物語っています。国と一つの市を比較するのは少し強引ですが、可能であるということは言えるはずです。
 現代は科学の力によって原発や戦闘機、ロケットなどのようなめちゃくちゃ大きな機械が使われる時代です。これからはこんな最新の巨大な物や莫大な力を持つ機械を敢えて使わない時代にしていかないと いけないと思います。使えるけど使わない、これはとても苦しい決断ですが、ここに私たちの未来があるように私は思います。


参照フライブルク市広報;
http://www.freiburg.de/servlet/PB/menu/1205980_l1/index.html?QUERYSTRING=Atom